「乳酸菌1兆個」「ヨーグルト100個分」。サプリの箱や通販ページで、この数字をよく見かけませんか?
結論から言うと、乳酸菌は数が多いほどいいとは限りません。1兆個という数字には、それが成り立つ理由があります。理由を知ると、数字の受け取り方が変わります。
この記事では、1兆個がどれくらいの数なのか、なぜそんなに数が入れられるのかを整理します。数の代わりに何を見ればいいかも書いたので参考にしてください。
結論:乳酸菌は「数」より「どの菌が・どんな状態で・どれだけ試されたか」

「1兆個」は、それだけで良い商品の証明にはなりません。見るべきなのは次の3つです。
- どの菌か(菌の名前と株)
- 生きた菌か、殺菌した菌か
- その菌を、その量で摂ったときの研究があるか
多くの「1兆個」とうたうサプリは、殺菌した乳酸菌を使っています。殺菌した菌は数を増やしやすく、生きた菌の数と同じ物差しでは比べられません。この記事のいちばん大事な点です。
「1兆個」はどれくらい?身近な食品の菌数と比べる
1兆個は、たしかに大きな数です。身近な食品と比べると次のようになります。
| 食品・商品 | 菌数の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| ヨーグルト(種類別:発酵乳)100g | 10億個以上 | 乳等省令の規格(1mlあたり1,000万個以上) |
| ヤクルト(Newヤクルト1本65ml) | 200億個 | トクホの許可内容 |
| 機能性表示食品の乳酸菌飲料の例 | 100億個 | 届出内容(ガセリ菌CP2305の例) |
| 「1兆個」をうたうサプリ | 1兆個 | 商品表示 |
種類別が「発酵乳」のヨーグルトは、1mlあたり1,000万個以上の乳酸菌か酵母を含むことが国の規格で決まっています。100gなら10億個以上です。パッケージ裏の「種類別」欄で確認できます。実際の商品はこの最低ラインより多いことが普通です。
「ヨーグルト100個分」の計算はどこから来たか
「1兆個=ヨーグルト100個分」という説明は、ヨーグルト1個(100g)に100億個入っていると仮定した計算です。商品によってはその旨が小さく注記されています。ヨーグルトの菌数は商品で大きく違うので、この換算はあくまで目安です。
前提を変えると数字は大きく動きます。国の最低ライン(100gで10億個)で計算すると、1兆個はヨーグルト1,000個分になります。逆に、菌数の多いヨーグルトなら数十個分です。「100個分」は数ある前提の1つにすぎません。
ヤクルトは1本で200億個、機能性表示食品の乳酸菌飲料は100億個前後のものが多くあります。トクホや機能性表示食品は、この数で研究をして届け出ています。つまり「数百億個」の範囲で、腸内環境に関する機能が報告されている商品がすでにある、ということです。
なぜ1兆個も入れられるのか|「殺菌した乳酸菌」という考え方

サプリに1兆個入れられる理由は、多くの場合、菌を殺菌して濃縮しているからです。
生きた菌と殺菌した菌は、数え方も働き方も違う
乳酸菌には「生きた菌(生菌:せいきん)」と「殺菌した菌(殺菌菌体・死菌)」があります。
生きた菌は、熱や酸に弱く、保存中に数が減ります。一方、殺菌した菌は熱に強く、粉にして高密度に詰められます。たとえば「1兆個」サプリでよく使われる殺菌乳酸菌の原料は、1gあたり5兆個以上と原料メーカーが公表しています。1兆個は、この原料を0.2g使えば達成できる数です。
「プロバイオティクス」という言葉は、国際機関(FAO/WHO)の定義では「適切な量を摂ったときに健康に有益な効果をもたらす、生きた微生物」です。殺菌した菌はこの定義には入りません。つまり、生きた菌の「◯億個」と、殺菌した菌の「1兆個」は、同じ物差しに乗らない数字です。
殺菌した菌にも研究はある。ただし「多いほど良い」の証明ではない
殺菌した菌に意味がない、という話ではありません。国立健康・栄養研究所の素材情報データベースには、加熱殺菌した乳酸菌を使ったヒト試験がいくつも載っています。1日200億個を12週間、約1,000億個を4〜8週間、2,000億個を12週間、といった試験です。項目によって「認められた」と「認められなかった」が分かれて記録されています。
ただし、これらは「その株を、決まった量で、決まった項目で試した」結果です。「数が多いほど良い」を示したものではありません。同じデータベースには、1日1億個で変化が認められた試験もあれば、2,000億個で認められなかった試験もあります。対象も見ている項目も違うので、数だけでは結果は決まりません。
パッケージの「◯億個」「◯兆個」はここを見る

菌数の表示は、同じ「1兆個」でも意味が違うことがあります。パッケージを見るときのポイントは3つです。
ポイント①:「1日分」の数か、「1粒」の数か
「1粒に1兆個」と「1日分(3粒)で1兆個」では、1日に摂る数が3倍違います。表示のそばに「1日目安量あたり」「1粒あたり」のどちらが書いてあるかを見ます。他の商品と比べるときは、1日分に揃えて比べると良いでしょう。
ポイント②:「製造時」の菌数か
生きた菌の商品には、「製造時の菌数」と注記されていることがあります。生きた菌は保存中に少しずつ減るので、飲むときの数は表示より少なくなります。悪いことではなく、正直な表示です。ただ、殺菌した菌の「1兆個」は減らないので、生きた菌の「製造時100億個」と数だけで比べても意味が薄れます。
ポイント③:原材料名に「殺菌」の文字があるか
原材料名の欄に「殺菌乳酸菌」「乳酸菌(殺菌)」「乳酸菌末」とあれば殺菌した菌です。「生菌」「生きたまま届く」とあれば生きた菌です。どちらも書いていない場合は、メーカーのサイトで確認しましょう。ここが分かるだけで、前の見出しで書いた「数の物差し」が決まります。
具体例は以下のとおりです。
・ロイテリ 乳酸菌サプリメントシリーズで「ロイテリ 乳酸菌サプリメントに配合されているロイテリ菌は生菌(生きた状態の菌)です。」と公式サイトに表示。
・キリン iMUSE ケアサプリメントの原材料欄には「乳酸菌殺菌乾燥粉末」と記載あり。
乳酸菌は1日に何個必要?公的な目安はない
乳酸菌の「1日◯個」という公的な基準はありません。ビタミンやミネラルのような推奨量は、乳酸菌には設定されていません。
トクホ・機能性表示食品の菌数は「その量で試した」数字
目安になるのは、トクホや機能性表示食品が「その菌をその量で試験した」数字です。ヤクルトなら200億個、ガセリ菌CP2305なら100億個、といった具合です。これらは「その菌で、その量で、こういう機能が報告されている」という組み合わせです。
他の菌にそのまま当てはめることはできません。薬でも、効能効果が認められている成分量が薬品ごとに違うことと同じです。
多く摂っても、腸にすみつくわけではない
食品から摂った乳酸菌の多くは、腸にすみつかず通り過ぎていきます。乳酸菌製品を作っているメーカーも、食品から摂った菌の多くは腸内に定着できないと説明しています。だから、一度に大量に摂るより、続けて摂ることのほうが意味があります。この点は、数が多いサプリでも同じです。
トクホや機能性表示食品の試験も、たいてい数週間から数か月、毎日摂って評価しています。1日だけ1兆個摂った結果ではありません。「今日たくさん飲んだから明日は休む」という飲み方は好ましくないです。
薬剤師が「菌の数」より先に見る3つ

私がサプリの箱を見るとき、菌の数より先に見るのは次の3つです。
1.菌の名前(株)と、その株での研究があるか
「乳酸菌配合」ではなく、「ガセリ菌CP2305株」「シロタ株」のように株の名前まで書いてあるかを見ます。研究は株ごとに行われるので、株の名前がない商品は根拠をたどれないからです。
2. 生きた菌か、殺菌した菌か
原材料名の欄を見ます。「殺菌乳酸菌」「乳酸菌(殺菌)」と書いてあれば殺菌した菌、「生菌」「生きたまま」とあれば生きた菌です。どちらが上という話ではなく、数字の意味が変わるので、先に確かめます。
3. 表示の種類
機能性表示食品やトクホなら、どの菌をどの量で試験したかを届出内容で確認できます。表示のない商品は、菌数が大きくても、その商品での根拠は分かりません。表示の種類の違いは、別の記事で整理しています。 → (機能性表示食品・トクホ・栄養機能食品の違い)
広告の「満足度◯%」のような数字の見方は、こちらに書きました。 (サプリ広告の「No.1」「◯%が実感」はどこまで信じていい?)
まとめ
- 乳酸菌は数が多いほどいいとは限らない。「1兆個」の多くは殺菌した菌で、生きた菌の数とは比べられない
- ヨーグルト100gは10億個以上、ヤクルト1本は200億個。トクホ・機能性表示食品は「その菌をその量で試した」ケースでの数字
- 公的な「1日◯個」の基準はない。多く摂っても腸にすみつくわけではなく、続けることのほうが大事
- パッケージでは「1日分か1粒か」「製造時の数か」「殺菌の文字があるか」の3つを確認する
- 見るのは、菌の名前(株)・生菌か殺菌か・表示の種類。数は最後
「何個入っているか」より「どの菌が、どんな状態で、どれだけ試されたか」。この順で見ると、選び方が変わります。
サプリを飲み始めて何日で判断するかは、こちらの記事に書きました。 (サプリは飲み始めて何日で実感できる?)
想定される質問

Q1. 乳酸菌は1日に何個とればいいですか?
公的な基準はありません。目安にできるのは、トクホや機能性表示食品が試験した量です。ヤクルトなら1本200億個、機能性表示食品の乳酸菌飲料では100億個前後のものが多くあります。「その菌では、その量」という組み合わせで見てください。
Q2. 「1兆個」は生きた菌ですか?
多くの場合、殺菌した菌です。原材料名に「殺菌乳酸菌」「乳酸菌(殺菌)」とあれば殺菌した菌です。殺菌した菌は熱に強く高密度に詰められるので、大きな数になります。生きた菌の数と同じ物差しでは比べられません。
Q3. 数が多いと、とりすぎの心配はありますか?
乳酸菌全体に公的な上限値は設定されていません。トクホの乳酸菌飲料では、1日目安量の3倍を4週間摂る試験を行い、問題となる副作用がなかったと報告されています。ただし、これは各商品の株と量で確かめた結果です。飲み始めにお腹が張る、ゆるくなるといった変化が出る人はいます。合わないと感じたら量を減らすか、いったんやめて様子を見てください。ヨーグルトや乳酸菌飲料で多く摂る場合は、糖分や脂質のとりすぎに注意します。
Q4. ヨーグルトとサプリ、どちらがいいですか?
どちらが上、とは言えません。ヨーグルトはたんぱく質やカルシウムも一緒に摂れて、菌の種類も商品で選べます。サプリは手軽で、決まった株を決まった量で摂れます。続けやすいほうを選ぶのが現実的です。菌のエサになる食物繊維を一緒に摂る考え方は、こちらの記事に書きました。 → (イヌリンはドラッグストアで買える?売り場と選び方を現役薬剤師が解説)
Q5. 今飲んでいる薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
殺菌した乳酸菌のサプリは、薬との相互作用の報告はほとんどありません。生きた菌の整腸剤は、抗生物質と一緒に飲むと菌が減ることがあり、抗生物質に強い菌を使った整腸剤が処方されることがあります。薬を飲んでいる人は、商品の原材料名が分かる写真を撮って、かかりつけの薬局で確認してください。
実際、現場では抗生物質が処方されると、ビオフェルミンRという抗生剤に耐性を持つ乳酸菌製剤が使われています。 → (ビオフェルミンの腸活サプリは毎日飲んで大丈夫?整腸剤との違いを薬剤師が解説)
Q6. 生きた菌と殺菌した菌、どちらを選べばいいですか?
どちらが上、とは言えません。生きた菌は「生きて腸に届く」ことを前提に研究された商品が多く、トクホの乳酸菌飲料はこの型です。殺菌した菌は熱や保存に強く、菓子や飲料にも入れやすいのが特徴で、こちらも株ごとに研究があります。選ぶなら、生きているかどうかより「その株で研究があるか」「表示の種類は何か」を先に見ます。数の大小で決めないでください。
外部リンク一覧(本文の登場順)
- 乳等省令(発酵乳の成分規格) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78333000&dataType=0&pageNo=2
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 Newヤクルト https://hfnet.nibn.go.jp/sp_health/detail4603/
- 消費者庁 機能性表示食品の届出情報検索 https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/
- コンビ株式会社 殺菌乳酸菌EC-12 https://www.combi.co.jp/f-foods/products/ec12/index.html
- 加藤豪人「ヒトにおけるプロバイオティクスの有効性と腸内細菌叢との関わり」腸内細菌学雑誌 33(4)(FAO/WHO定義の引用元) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/33/4/33_175/_pdf
- hfnet ピルクル400 https://hfnet.nibn.go.jp/sp_health/detail4547/
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 素材情報データベースで「乳酸菌」を検索 https://hfnet.nibn.go.jp/material-infodb/validity-infodb/
- 腸活ナビ https://brand.taisho.co.jp/contents/chokatsu/072/


コメント