「顧客満足度No.1」「利用者の95%が満足」。サプリの広告やドラッグストアのPOPで、こうした数字を毎日のように見かけます。この数字は、誰に・何を聞いた結果なのかで意味がまったく変わります。実際に使った人の評価とは限りません。
この記事では、消費者庁が2024年に公表した調査報告をもとに、広告の数字の見方を整理します。数字に頼らずにサプリを選ぶとき、薬剤師が代わりに何を見ているかも書きました。
結論:「No.1」「◯%が満足」は品質を証明する数字ではない

「No.1」や「◯%が満足」は、商品の品質や機能を証明する数字ではありません。広告に使うことを前提に行われた調査もあります。見るべきなのは、順位や割合そのものではなく「誰に・何を・どのように聞いたか」です。表示を「うそ」と決めつける必要はありません。ただ、数字を見たら「誰に聞いた?」と一度立ち止まる。それだけで、広告に振り回されにくくなります。
「No.1」の数字は、誰が・誰に・何を聞いたかで決まる
「No.1」の表示には、大きく2種類あります。
1つは、売上額や販売個数のように、数えれば決まる数字にもとづくもの。もう1つは、「満足度」「おすすめしたい」「コスパが良いと思う」のように、人の感想を集めたものです。問題になりやすいのは2つ目です。感想の調査は、聞き方しだいで結果を動かせるからです。
消費者庁は2024年9月、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。きっかけは、根拠のあいまいな「No.1」表示への処分が急に増えたことです。2023年度に消費者庁が出した景品表示法の措置命令44件のうち、13件がNo.1表示に関するものでした。
処分された事案に共通するのは、表示に見合った調査が行われていなかったことです。多くは、使った感想ではなくウェブサイトを見た印象を根拠に『顧客満足度No.1』などと表示していました。この印象を聞く調査を「イメージ調査」と呼びます。これは、商品を使ったことのない人に各社のウェブサイトを見せる調査です。そのうえで「満足度が高そうなものを選んでください」と聞きます。
No.1表示を見たことがある人では、こんな結果が出ています。
- No.1表示を見て、購入の判断に「かなり影響する」「やや影響する」と答えた人は約5割
- 「顧客満足度No.1」「人気No.1」の表示を見て、他社の商品より優れていると思った人は5割超
- 実際に使った人に調査した結果だと思った人は4割超
多くの人が「使った人の評価だろう」と受け取るのに、実際はそうでない調査が使われていた。ここがこの問題の中心です。報告書は、感想にもとづくNo.1表示に「合理的な根拠」があると言えるための条件を4つ挙げています。
- 比較する商品が適切に選ばれている(市場の主要な商品が入っている)
- 調査する相手が適切に選ばれている(無作為に選ばれた人。自社の常連客や社員だけではない)
- 調査が公平な方法で行われている
- 表示の内容と調査結果が合っている
「顧客満足度No.1」と書くなら、実際にその商品を使った人に聞いた結果である必要があります。小さな文字で「イメージ調査によるものです」と注記しても同じです。表示と調査結果が合っていないことに変わりはない、と報告書は述べています。
もう1つ知っておきたいのは、こうした調査が調査会社に頼めば作れることです。広告主への聞き取りでは、調査会社から勧誘を受けて頼んだという回答が多くありました。「1フレーズ10万円〜数十万円」という費用の安さが決め手だった、という声もあります。広告主の多くは、アンケートの質問文や比較相手が何だったかも把握していませんでした。
「3冠達成」も、満足度・人気・おすすめしたいなど3種類の感想調査で1位になった、という意味の場合があります。冠の数ではなく、それぞれの調査方法を確認してください。「No.1」の文字は、それ自体が商品の実力を示すものではありません。「調査の中身を確かめる合図」と考えるのが、いちばん安全な受け取り方です。
広告の小さな注記はここを見る|3つの確認点
「No.1」の近くには、たいてい小さな文字の注記があります。読むときの確認点は3つです。
確認点1:使った感想か、サイトを見た印象か
『サイトイメージ調査』などの注記があれば、使った感想ではなくサイトを見た印象を聞いた調査です。『サイト比較』とだけ書いてある場合は、誰に何を聞いたのかまで確かめてください。
確認点2:何と比べたのか、比較相手が書いてあるか
「◯◯で検索して上位5社」のような書き方は、主要な商品が抜けている可能性があります。報告書は、検索結果の上位だけを比較相手にした調査を「問題となるおそれがある例」として挙げています。
確認点3:調査会社・調査期間・調査対象者の人数が書いてあるか
書いていない、または読めないほど小さい場合は、根拠を確かめようがありません。消費者庁は、広告に調査方法の概要を書くか、QRコードなどで確認できるようにすることが望ましい、としています。
3つとも書かれ、実際の利用者を対象にした調査なら、判断材料の一つにはなります。ただし、質問の仕方や比較相手しだいで結果は変わります。数字だけで商品の品質や自分との相性までは判断できません。
「利用者の◯%が実感」「満足度98%」の数字はここを見る
「◯%」の数字も、No.1と同じ見方で確かめます。
消費者庁の報告書は、「専門家の◯%が推奨」「利用者の◯%が実感」のような表示を「高評価%表示」と呼んでいます。扱いはNo.1表示と同じ考え方です。調査した相手・方法・表示との対応が適切でなければ、景品表示法上問題になるおそれがあります。
報告書に出ている「問題となる例」を2つ挙げます。
- 「おすすめしたい商品」を選ばせるとき、自社商品を選択肢のいちばん上に固定して誘導する
- 自社商品が1位(または目標の%)になった時点で調査を打ち切る
どちらも、聞き方を工夫すれば数字を作れる、という例です。
「個人の感想です」の注記があっても受け止めは変わらない
体験談の横によくある「個人の感想です。効果には個人差があります」という一文。消費者庁の別の調査報告によると、読んだ人はこの注記に気づいても受け止めをほとんど変えません。「だいたいの人に効くのだろう」と思ったままです。
つまり、「この一文があるから安心」とはなりません。一人の体験だけでは、ほかの人にも同じ変化が出るとは判断できません。
数字の代わりに薬剤師が見ている3つのこと

「No.1」や「◯%」を見ない代わりに、私は次の3つを見ています。
1.表示の種類と届出内容
まず、その商品が機能性表示食品・トクホ・栄養機能食品のどれか、あるいは「それ以外の一般食品(機能を表示できない食品)」かを見ます。
機能性表示食品なら、消費者庁の届出データベースで、どの成分について、どのような機能が届け出られているかを確認できます。広告の印象だけで判断せずに済むということです。ただし、国が効果を審査・保証した制度ではありません。事業者が自分の責任で届け出る仕組みです。
表示の種類ごとの違いは、別の記事で整理しています。(機能性表示食品・トクホ・栄養機能食品の違い)
2.成分名と1日分の量
「乳酸菌配合」をうたう商品では、菌の名前と個数。「食物繊維たっぷり」をうたう商品では、1日分に何グラムか。量が書いていない商品は、比べようがありません。パッケージ裏の「栄養成分表示」と「原材料名」の欄を見ます。
3.注意事項と続けやすい価格
パッケージの「摂取上の注意」の欄も見ます。「薬を服用中の方はご相談ください」「1日の目安量を守る」といった文章は飾りではありません。その成分で実際に注意が要る点を示しています。
もう1つは価格です。続けるなら、1か月分の値段で「続けられるか」を先に考えます。ただし、長く飲めば必ず変化を実感できるとは限りません。
まとめ
- 「No.1」「◯%が満足」は、商品の品質を証明する数字ではない。誰に・何を聞いた数字かで意味が変わる
- 注記に「イメージ調査」とあれば、使った感想を調べた結果とは限らない
- 比較相手・調査会社・期間・人数が書いていない数字は、確かめようがない
- 「個人の感想です」の一文があっても、体験談の受け止め方はほとんど変わらないと消費者庁は見ている
- 代わりに見るのは、表示の種類と届出内容・成分名と1日分の量・注意事項と続けやすい価格
数字を見たら「誰に聞いた?」と一度立ち止まる。それだけで、選び方は変わります。
サプリを飲み始めて、何日くらいで判断すればいいかは、こちらの記事に書きました。(サプリは飲み始めて何日で実感できる?)
想定される質問

Q1.「No.1」と書いてある商品は避けたほうがいいですか?
避ける必要はありません。売上額にもとづく「No.1」は、示された期間・地域・販売経路で売上が最も多かったことを示します。ただし、買った人の数が最も多いとは限りません。避けたいのは、根拠を確かめられない「満足度No.1」を理由に選ぶことです。
Q2.「◯%が実感」の数字が本当かどうか、自分で調べられますか?
広告に調査会社名・期間・人数が書いてあれば、調査会社のサイトで概要を確認できることがあります。書いていない場合、一般の人が確かめる方法はほぼありません。確かめられない数字は「参考程度」と割り切るのが現実的です。
Q3.口コミサイトの評価を信じていいですか?
参考にはなりますが、良い口コミだけを集めて載せる広告もあります。消費者庁は、都合の良い体験談だけを引用することも不当表示にあたるおそれがあるとしています。口コミを見るなら、広告の中ではなく、販売店や口コミサイトで良い評価と悪い評価の両方を見ます。
Q4.今飲んでいる薬と一緒に飲んでいいサプリか、広告で分かりますか?
広告では分かりません。「No.1」や「満足度」は飲み合わせの安全性とは無関係です。薬を飲んでいる人は、商品名と成分表示が分かる写真を撮って、かかりつけの薬局で見せてください。私が、実際に患者さんにサプリとの飲み合わせを聞かれた時は、薬は添付文書、サプリは国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報で成分ごとに確認しています。
外部リンク一覧
- 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表についてhttps://www.caa.go.jp/notice/entry/039459/
- 同報告書本文(PDF・令和6年9月26日)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_02.pdf
- 同概要資料(PDF)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_03.pdf
- 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(PDF)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0004.pdf
- 消費者庁機能性表示食品の届出情報検索https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/


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